お客様アンケートの自由記述が、読まれないまま溜まっている小さな会社の人に向けた話
アンケートの自由記述欄は、選択式の設問と違って集計ができない。1件ずつ読めば意味は分かるのに、10件、20件と溜まると、「全体として何が言われているのか」を一言で言うのが急に難しくなる。専任の担当者がいない小さな会社だと、気づいたらそのまま置きっぱなし、ということもあると思う。
そこで、この「ざっと目を通して、要点をまとめる」作業をClaudeに頼んでみた。ただし最初に断っておくと、これは実際に集まったお客様の声ではない。試すために自分で用意した、架空のサンプルの自由記述10件だ。
実験:架空の自由記述10件を渡して、要点を頼む
来院や来店のある、予約制のお店を想像して、受付・会計・予約の電話・案内表示についての声を10件並べた。良い声と不満の声を混ぜ、似た内容が言い回しを変えて何度か出てくるようにしてある。Claudeに送った文面は次のとおり。
お客様アンケートの自由記述が10件くらい溜まってるんだけど、ざっと目を通して要点だけ教えてほしい。以下コピペします。
・受付の対応が丁寧で良かった
・会計のときちょっと待たされた
・駐車場が分かりにくかった
・スタッフさんの説明が丁寧だった
・予約の電話がなかなか繋がらなかった
・案内板がもう少しあると助かる
・会計待ちの時間が長かった
・電話対応の際、保留時間が長かった
・スタッフの対応は良いが、受付の列ができていた
・予約が取りにくい時間帯がある要点だけ簡潔にまとめてもらえる?
「要点だけ」と頼んだので、10件を1行ずつ言い換えて返されるものだと思っていた。実際に返ってきたのは、次のような答えだった。

※画面は、実際のやり取りの文面をそのまま、見やすく再現したもの。
要点は3つに絞れそう、という前置きのあと、次の3つが挙がっていた。
- 会計待ちの時間が長い:3件。一番声が多いポイント
- 予約の電話が繋がりにくい:2件。予約枠や電話対応の見直しが要りそう
- 案内表示がわかりにくい:2件(駐車場、案内板)。サイン類の補強で改善できそう
そして最後のまとめには、こう書かれていた。
つまり、スタッフの質そのものへの不満はほぼなく、「混雑・待ち時間」と「予約の取りやすさ」「案内のわかりやすさ」がボトルネックという構図です。
こちらが頼んだのは「要点だけ」だった。それでも、バラバラに見える10件の声を3つの切り口に整理し、さらに「スタッフの対応は評価されていて、待ち時間・予約・案内が課題」という全体の構図まで言葉にしてくれた。10件を1件ずつ読んでも、なかなか自分では一言にできなかった部分だと感じた。
数えて確かめたら、ズレが1か所あった
この結果を、そのまま信じてよいのかは別の話だ。元の10件を自分で数え直して、Claudeの答えと照らし合わせた。
- 会計待ち:「会計のときちょっと待たされた」「会計待ちの時間が長かった」の2件は、はっきり会計待ちの声。Claudeは3件としていて、「電話対応の際、保留時間が長かった」を含めて数えている。保留の待ち時間は予約の電話の話とも読めるので、どちらに入れるかは人によって分かれそうだと思った。
- 予約の電話:「繋がらなかった」「予約が取りにくい時間帯がある」の2件で、Claudeの数と一致した。
- 案内表示:「駐車場が分かりにくかった」「案内板がもう少しあると助かる」の2件で、一致した。
- 好評の声:Claudeは「4件」としていたが、元の10件で良い評価をしているのは、「受付の対応が丁寧」「スタッフさんの説明が丁寧」「スタッフの対応は良いが……」の3件だった。ここはClaudeの数え間違いだと思う。
全体の構図(待ち時間・予約・案内が課題で、スタッフの対応は評価されている)は、数え直しても変わらなかった。ただ、件数のような細かい数字は、合っているとは限らない。今回のように、「何が多いか」という方向は合っていても、「何件か」は1つズレることがある。
なお、この試しは1回だけだ。声の件数や言い回し、使った時期によって、同じ整理になるとは限らない。
頼み方を3ステップにすると
- 声を、文字でそのまま貼る。名前や連絡先など、個人が分かる部分は先に消しておく。
- 「要点だけ」に加えて、「何件ずつか」「どの声を元にしたか」も出してもらう。今回は件数と元の声が一緒に返ってきたので、数え直せた。出てこない場合は、そう頼むとよいと思う。
- 返ってきた件数と分類を、自分で数え直す。声が10件程度なら数分で終わる。分け方に迷う声(今回の「保留時間」のような声)は、自分の判断で入れ替えてよい。
任せきりにしないための確認ポイント
- 件数は数え直す。今回は好評の件数が1つズレていた。改善の優先順位を決めるときなど、件数が判断に効く場面ほど、自分で確かめてほしい。
- 分類は「1つの見方」だと考える。声をどう分けるかに正解は1つではない。Claudeの分け方は、まとめの出発点として使い、自社の事情に合わせて組み替えるのがよさそうだ。
- 個人情報は渡さない。今回の試しは、架空のサンプルだけで行った。実際のアンケートには、名前や連絡先、病名などの書き込みが含まれていることもある。外部のAIサービスに渡してよいかは、先に自分の会社のルールを確認してほしい。
- 少数の声を見落とさない。要点にまとめるほど、1件だけの重い指摘は目立たなくなる。「1件だけの意見も別に出して」と頼むのも1つの手だが、今回はそこまで試していない。
同じように、貼った数字や文面を整理して、確認ポイントまで出してもらう使い方は、月末の経費精算が重い、小さな会社の人へ:レシートの金額をClaudeに渡して、合計と「確認ポイント」まで出してもらう方法や、見積書や請求書の合計ミスが不安な、小さな会社の人へ:わざと間違えた合計をClaudeに渡して、検算を頼んでみたでも試している。人手が足りない部分をAIで補う考え方については、人を増やさず、AIを増やす。海外で広がる「AI社員」という考え方にまとめた。
まとめ
架空の自由記述10件を渡したところ、Claudeは「待ち時間」「予約の電話」「案内表示」の3つに整理し、「スタッフの対応は評価されていて、課題は待ち時間・予約・案内」という全体の構図まで言葉にしてくれた。一方で、好評の声の件数は1つ多く数えていた。方向を掴むために使い、件数は自分で数え直す。そういう使い方が、今のところ一番安心できると感じた。次は、声の件数をもう少し増やして、結果が安定するかを試してみたい。

