結論から書くと、AIが書いた営業メールの下書きに誤りを5つ仕込んでClaudeに確認を頼んだら、4回やって4回とも5つ全部を指摘した。合計金額の1,000円のズレも、宛名と件名の名前違いも、根拠のない「9割」も見つけた。ただ、頼み方で違いが出たのは「見つけた数」ではなく、「どうやって人間が確かめればいいか」と「自分では確かめられなかったこと」を書いてくれるかどうかだった。
だから、AIの下書きを出す前にAIに見せるのは「アリ」だと思う。ただし、最後の確認は人間がやる。この記事では、実際に試した結果と、そのまま使える頼み方を載せる。
試した条件:2026年10月23日、Claude(Claude Codeのサブエージェント機能で、別々の会話として実行)。通常の頼み方で2回、証拠つきの頼み方で2回。会社も人物も金額もすべて架空で、誤りは私がわざと入れたもの。素のチャット画面(claude.ai)とまったく同じ答えになるとは限らない。
「AIが書いた文面を出していいか自信がない」は、よくある悩み
AIでメールや資料の下書きを作ると速い。一方で「鵜呑みにするな」と言われても、何を、どう見ればいいのかが分からない、という声は職場でもよく聞く。特に営業や事務は、金額・日付・名前・実績の数字がそのまま相手に届く。1か所の間違いが信用に響く。
そこで、見積もりを送るメールの下書きに誤りを仕込み、Claudeに「送る前の確認」をさせてみた。人間が見るより先にAIに見せたら、どこまで拾えるのか。拾えないのは何か。それを数え直したのがこの記事だ。
早見表:4回の結果
| 頼み方 | 見つけた誤り | 「確かめ方」の記載 | 確かめられなかったことの記載 |
|---|---|---|---|
| 通常①「確認してください」 | 5つ全部 | ほぼなし(直し方が中心) | なし |
| 通常②「確認してください」 | 5つ全部 | ほぼなし | なし |
| 証拠つき① | 5つ全部(曜日は「年が無いので断定できない」) | 項目ごとにあり | あり(カレンダー・今日の日付) |
| 証拠つき② | 5つ全部 | 項目ごとにあり | あり(価格表・カレンダー・登記など) |
数字は私が1件ずつ数え直した。4回とも、仕込んだ5つはすべて指摘されていた。違いが出たのは書き方のほうだ。なお、5つ以外にも、見積もりの有効期限・署名・トライアル後の自動課金など、書いておくと親切な点の提案が出た回があった。
今回試した下書きと、仕込んだ5つの誤り
お見積りを送るメールで、全体は400字ほど。次の5か所に、私がわざと誤りを入れた。
- 計算:税抜62,000円・消費税6,200円なのに、税込合計を「69,200円」と書いた(正しくは68,200円)
- 日付と曜日:「10月28日(木)」と書いた。2026年の10月28日は水曜(Pythonの日付計算で確認)
- 名前:件名は「山田様向け」、宛名は「山本 様」
- 数字の出どころ:「導入企業の9割が、1か月以内に現場で定着しています」(根拠なし)
- 文面内の矛盾:「翌月末日までにお振込み」と「請求書の発行日から14日以内」を同時に書いた
反対に、正しい行も混ぜてある。「8,000円×5席=40,000円」「消費税10%=6,200円」などだ。AIが正しい行まで間違いと言わないかも見たかった。どの回も、この行を間違いとは言わなかった。証拠つきの2回は、40,000円になる根拠まで書いて「正しい」としていた。ただし1回は、税抜の見出しの下に税込の合計を置いた書き方を「軽微」な点として挙げていた。
頼み方①:ただ「確認してください」と頼む
1つ目は、下書きを貼って「確認してください」と頼むだけの方法だ。結果は、2回とも5つ全部を指摘した。「このまま送ってはいけません」と最初に結論を言い、直す点を番号つきで並べ、修正例まで添えてくれた。
ここで気づいたのは、2回とも「2026年の10月28日は水曜日」と指摘していたことだ。文面に年は書いていない。AIが自分で2026年だと見て、そのうえで曜日を答えている。当たってはいたが、年を確認するよう添える程度で、どう確かめるかの手順までは書かれていなかった。
もう1つ。「確かめ方」はほとんど書かれていなかった。直し方は分かる。でも、AIの言うことが合っているかを人間が確かめる手がかりは少ない。
頼み方②:「証拠つき」で頼む
2つ目は、確認の条件を指示文に書く方法だ。私が使ったのは次の文。
取引先に送る前の確認をしてください。
1. 「問題ありません」とだけ答えず、確認した項目ごとに「文面のどの部分か(原文を引用)」「なぜ問題か、または問題ないと言える根拠」「人間が確かめる方法」を書くこと。
2. 計算・日付と曜日・名前・数字の出どころ・文面内の矛盾の5種類を、必ず1つずつ点検すること。
3. 自分で確かめられなかったことは、確かめられなかったと正直に書くこと。
結果は、やはり2回とも5つ全部。ただ、中身が変わった。

- 「確かめ方」が項目ごとについた:合計は表計算で「=8000*5+22000」を計算して見積書と照合、名前は名刺や過去のメールで確認、という具合
- 確かめられなかったことが分かった:曜日については「年が書かれていないので断定できない。10月28日が木曜なのは2021年と2027年で、2026年は水曜」。そのうえで、今日の日付と実際の打ち合わせ日はカレンダーがないと確認できなかった、と書いた
- 正しい行は正しいと分かった:合っている行も、根拠つきで「正しい」と返ってきた
私の頼み方が影響した可能性が高い。ただ、これは4回だけの結果なので、いつもこうなるとは言い切れない。
それでも人間が確かめるべき3つ
証拠つきの2回では、AIが「文面だけでは分からない」ことを書いていた(通常の2回では、その記載はなかった)。つまり、次の3つは人間の仕事だと考えたほうがいい。
- 実際の打ち合わせ日:文面の中にない情報。カレンダーや招待メールで見る
- 価格表との一致:8,000円・5席・22,000円が実際の見積もりと合っているか。AIは社内の価格表を持っていない
- 「9割」の根拠:AIは「根拠がない」とは言えるが、本当の数字があるかは知らない。自社の資料にあるかを探す
一方で、計算(合計の1,000円のズレ)と、文面の中の矛盾(名前・支払条件)は、AIに任せても今回は4回とも拾えていた。ただし、これも「今回の1つの文面で」の話だ。
そのまま使えるコピペ用の指示文
下書きを貼る前に、次の指示文を先に入れておく。会社名・個人名・本当の金額は、練習のうちは入れない。
次は、取引先に送る前のメールの下書きです。確認してください。
・確認した項目ごとに「原文の引用」「なぜ問題か(または問題ない根拠)」「人間が確かめる方法」を書いてください。
・計算、日付と曜日、名前、数字の出どころ、文面内の矛盾を、1つずつ点検してください。
・カレンダーや社内資料がないと確かめられないことは、「確かめられなかった」と書いてください。
使い方は3つのステップ。①下書きの前に指示文を貼る ②返ってきた「確かめ方」を上から順にやる ③「確かめられなかった」と書かれた項目は、必ず自分の目で確認する。
注意点:個人情報と会社のルール
- 実在の取引先名・金額・個人名は、そのまま入れない。練習は架空の名前で。実務では、会社のAI利用ルールに従う
- AIが「問題なし」と言っても、送信ボタンは人間が押す。最後に見るのは、あなた
- AIの返答は毎回少し変わる。今回は4回だけの確認なので、重要な文面ほど自分の目でも見る
よくある質問
Q. ChatGPTやGeminiでも同じ頼み方は使えますか?
A. 指示文は、どのAIでもそのまま貼れる形にしてある。ただ、今回試したのはClaudeだけで、他のAIで同じ結果になるかは確認していない。各AIの特徴や料金は、ChatGPT・Claude・Geminiの使い分けをまとめた記事で整理している。
Q. 誤りを仕込むのは、実際の仕事で意味がありますか?
A. 自分の下書きに誤りを仕込む必要はない。今回は「AIがどこまで拾えるか」を数えるために、私がわざと入れた。普段は、そのまま下書きを貼って使えばいい。
Q. 金額のチェックは、AIだけで足りますか?
A. 今回の合計の誤りはAIが4回とも見つけた。ただ、請求や契約に関わる金額は、電卓や表計算で自分でも計算し直してほしい。
Q. 「確かめられなかった」と書かれたら、どうすれば?
A. その項目は、AIの代わりに人間が確かめる。カレンダー、価格表、契約書など、AIが持っていない資料を見るのがあなたの役割になる。
まとめ
AIが書いた営業メールの下書きに誤りを5つ仕込んで、Claudeに4回チェックさせたら、4回とも5つ全部を指摘した。頼み方の違いは、見つける数ではなく、「確かめ方」と「確かめられなかったこと」を書いてくれるかどうかだった。ただ、試したのは1つの文面を4回だけで、いつも同じ結果になるとは限らない。
次の1通から、指示文を先に貼って、「確かめ方」を上から順にやってみてほしい。それだけで、AIの下書きを出す前の安心感がかなり変わる。数字や仕訳をAIに確かめてもらう話は、架空の仕訳10件を検算してもらった記事や、経費精算のレシート12枚の実験、わざと間違えた見積もりの検算でも試している。
